OPQRSTをはじめ、医療面接で役立つ語呂合わせをまとめます。
主訴に関する語呂合わせ
OPQRST
O … onset 発症様式
P … provocative・palliative 増悪・寛解因子
Q … quality・quantity 質・量
R … region・radiation 部位・放散
S … symptoms 随伴症状
T … time course 時系列
Onsetはsudden, acute, subacute, chronicの4つの発症速度とprogressive, continuous, episodic, recurrentの4つの進行要素を考えると良いかもしれません。
特にsuddenな発症様式を取るものとして、TROPが知られています。
T … tear・torsion 裂ける・捻れる
R … rupture 破れる
O … obstruction 詰まる
P … perforation・penetration 孔が開く・貫く
OPQRSTにUとVを加える派生形もあります。
U … understanding 理解
V … value 価値
これは「かきかえ」に似ていますね。
か … 感情
き … 期待
か … 解釈
え … 影響
「かきかえ」は英語圏ではFIFE(横笛)とまとめられています。
F … feelings 気持ち
I … ideas 病気への考え
F … functions 生活機能への影響
E … expectations 医療への期待
COMPLAINTS
OPQRSTは有名ですが、医療面接での順序と異なるところが難点です。その点をおおむね改良したのがCOMPLAINTSです。COM・PL・AIN・TSと4つに分けると理解しやすいです。病歴.comと言われるように、特に最初のCOMが最重要です。
C … chief complaints 主訴(何が)
O … onset 発症様式(いつ)
M … magnitude 重症度(どれくらい)
P … pattern 性質(どんな)
L … location 部位(どこ)
A … associate 随伴症状(=)
I … improve 寛解因子(+)
N … negative 増悪因子(−)
T … treatments 受診前にどのように対処したか?
S … similar episodes これまでに似たエピソードはなかったか?
結局、何が(What)、いつ(When)、どこ(Where)、どんな・どれくらい(How)で起きたか訊くのが大事です。5W1Hでは他に誰(Who)、なぜ(Why)がありますが、こちらは医療面接では直接的には取り入れづらいかもしれません。
LIQORAAA
「AAA級のお酒」という英語圏のフレーズです。
L … location 部位
I … intensity 強度
Q … quality 性質
O … onset 発症様式
R … radiation 放散
A … alleviative factors 寛解因子
A … aggravating factors 増悪因子
A … associated symptoms 随伴症状
SIQORAAA(S:site 部位)という類似版もあります。
LQQTSFA
L … location 部位
Q … quality 質
Q … quantity 量
T … timing 発症様式〜時系列
S … setting 環境
F … factors 寛解・増悪因子
A … associated symptoms 随伴症状
LQQTSFAはtimingとsettingが特徴的です。
OLQIFAT
O … onset 発症様式
L … location 部位
Q … quality 性質
I … intensity 強度
F … factors 増悪・寛解因子
A … associated symptoms 随伴症状
T … time course 時系列
OLQIFATは医療面接の順におおむね沿っています。
患者背景に関する語呂合わせ
FAMPLES
F … family 家族歴
A … allergy・ADL アレルギー・ADL
M … medication 内服薬
P … past history・pregnancy 既往歴・妊娠
L … last meal 最後にとった食事
E … events 出来事
S … sake・smoke・syoku 飲酒・喫煙・職業
AMPLEが原型ですが、AMPLE→SAMPLE→FAMPLESと項目を増やせます。
かきくけこさしすせそ
か … 家族歴
き … 既往歴
く … くすり
け … 健康診断
こ … 渡航歴
さ … 酒タバコ
し … 食事
す … 睡眠
せ … 性活動
そ … ソーシャル(職業など)
食事や睡眠も入っているのが特徴的です。五快や三快一重での確認も有効です。
快食
快便
快眠
快動
快重
ABCDEFG
A … allergy・anamnese アレルギー・既往歴
B … background 患者背景(職業・居住)
C … cook 食事・飲酒喫煙
D … drug 内服薬
E … exposure 暴露(ペット・海外渡航歴)
F … family 家族歴
G … gynecology 婦人科(妊娠・月経)
ゴロは良いですが、ちょっと思い出しづらいかもしれません。
PDASFROS
P … past history 既往歴
D … drug 薬剤歴
A … allergy アレルギー
S … social history 社会歴
F … family history 家族歴
ROS … review of systems 臓器ごとの系統的な問診
Review of systemsを含めている点が特徴的です。
特定の場面で役立つ語呂合わせ
CUPSOUP(病状説明)
C … circumstance 時間と場所を予約
U … you あなたの考えを整理する
P … partner 相手の状況を分析する
S … share 共有する
O … offer その上で提案する
U … unite 対話して調整する
P … plan 計画をまとめる
カップにあたたかいスープを注ぐように、病状説明を行う時のコンセプトをまとめた語呂合わせです。天野先生の著書「病状説明 ケースで学ぶハートとスキル」(医学書院 2020年)で詳述されています。
sCGA & mCGA(訪問診療・高齢者診療)
s … support サポート(介護者は誰か?、公的な支援は?)
C … cognition 認知機能
G … geriatric giants 老年医学の巨人(うつ・転倒・尿失禁)
A … ADL 日常生活動作(BADL・IADL・AADL)
m … medication 薬の調整・減薬
C … care the caregiver 介護者のケア
G … geriatric vitals 五快(快食・快便・快眠・快動・快重)
A … analgesia 緩和ケア
CGA(高齢者総合的機能評価)に合わせた語呂合わせです。sはstart-up、mはmodifiedに由来します。
MIST(救急隊からの情報収集)
M … mechanism 受傷機転
I … injury 損傷部位
S … sign バイタルサイン
T … treatment 処置
救急隊では、MISTと前述のSAMPLE(ただしSはsake・smoke・syokuではなくsymtoms 症状)に加えてGUMBAも広く知られています。
G … 原因
U … 訴え
M … めし
B … 病歴と薬
A … アレルギー
あいうえおs(発熱性好中球減少症の症状確認)
あ … perianal abscess(肛門周囲膿瘍)
い … insertion(ルート部分の感染、カテーテル関連血流感染)
う … upper gastrointestinal tract(上部消化管)
え … eye(眼)
お … oral ulcer(口内炎)
S … skin(皮膚)、sinus(副鼻腔)
発熱性好中球減少症(FN)では症状が出にくいですが、それでも医療面接・身体診察は重要です。その際に普段の診療に加えて、特に注意すべき部位は「あいうえおs」とまとめられています。
語のイメージから連想するのもありかもしれません。いたいルート、うっとなる上部消化管症状、えっと見開く眼、おっと開く口、のようなイメージです。あるいはアルファベットの“O”から口をイメージしても良いと思います。
はひふへほ(低血糖の症状確認)
は … 腹が減った
ひ … 冷や汗
ふ … ふるえ
へ … へんに動悸がする
ほ … ほうっておくと昏睡
CAGE(アルコール依存症)
C … cut down お酒を減らそうと思ったことは?
A … annoyed 誰かに飲酒を非難されて腹が立ったことはあるか?
G … guilty 飲酒に罪悪感はあるか?
E … eye opener 朝酒や迎え酒をしたことはあるか?
4項目中2項目以上でアルコール依存症が疑われます。
MATTERS(薬物中毒)
MA … medication amount 薬の種類と量
TT … time taken 内服にかかった時間
E … emesis 嘔吐の有無
R … reason 過量内服の理由
S … signs & symptoms バイタル変化や中毒症状
うつ(PHQ-2、2質問法)
う … 抑うつ気分(憂鬱な気分になったり、気分が落ち込んだりする)
つ … つまらない(興味・喜びの喪失、何をしても楽しくないと感じる)
1つでもyesなら陽性で、感度97%、特異度67%と報告されています。BMJ 2003;327:1144