ノルアドレナリンの投与方法と用量計算

ノルアドレナリン(英語:Noradrenaline, Norepinephrine 略称:NAD, NAd)の投与方法についてまとめます。

まとめ
  1. NAD 0.05〜0.3 γで使います。
  2. NAD 3A(3mg / 3mL)+生食47mL 組成で、0.05 γ = 体重 x 0.05 mL/h です。

ノルアドレナリン1Aは…?

ノルアドレナリン 1A = 1mg / 1mL です。

投与方法について、下記に添付文書の記載を引用しますが、これは一般的な投与方法ではありません。

  • ノルアドレナリンとして、通常、成人1回1mgを250mLの生理食塩液、5%ブドウ糖液、血漿又は全血などに溶解して点滴静注する。一般に点滴の速度は1分間につき0.5〜1.0mLであるが、血圧を絶えず観察して適宜調節する。
  • ノルアドレナリンとして、通常、成人1回0.1~1mgを皮下注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
ノルアドリナリン注1mg 添付文書

一般的に、0.05 〜 0.3 γ の間で用います。

補足 最小量は0.03γとされることもあります。

補足 血圧低下が著しい時等に、開始量として0.1γから用いることもあります。

補足 最大量として0.5γまで投与されることもあります。

γ=μg/mL/minで、臨床では50mLシリンジポンプに詰めて精密持続静注を行うことが多いため、γ→mL/hへの変換が必要となります。レジデントになりたての頃は、この計算が苦手でした。敗血症性ショックで血圧が低下していくような、急ぐ時に限って、この計算が必要になるので、下記にまとめました。救急や日頃の勉強で参考にしていただければ幸いです。

ノルアドレナリンの代表的な投与方法

1A組成の場合

NAD 1mg / 1mL + 生食 9mL(合計 10mL)の場合、0.05 γ = 体重 x 0.03 mL/hです。

10倍希釈です。

なお、γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (10mL / 1mg) x mg/h = 体重 x 0.6 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg0.91.82.73.64.55.4
40 kg1.22.43.64.86.07.2
50 kg1.53.04.56.07.59.0
60 kg1.83.65.47.29.010.8
70 kg2.14.26.38.410.512.6
80 kg2.44.87.29.612.014.4

100倍希釈(NAD 1A + 生食 100mL)することもあります。

その場合、0.05γ = 体重 x 0.3 mL/hです。

γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (100mL / 1mg) x mg/h = 体重 x 6 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

2〜3mL(0.02〜0.03mg)ずつ調整できます。

点滴する場合は、3秒1滴=60秒20滴=1mL/min=60mL/h=体重50kgで0.2γです。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg91827364554
40 kg122436486072
50 kg153045607590
60 kg1836547290108
70 kg21426384105126
80 kg24487296120144

2A組成の場合

NAD 2mg / 2mL + 生食 38mL(合計 40mL)の場合、0.05 γ = 体重 × 0.06 mL/hです。

20倍希釈です。

一般的に循環作動薬で等倍で用いる薬剤は開始量が1γ、20倍希釈で用いる薬剤は0.05γ(1÷20)から用いるという原則があり、2A組成・合計40mLで作ると、この原則に合致します。

なお、γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (40mL / 2mg) x mg/h = 体重 x 1.2 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg1.83.65.47.29.010.8
40 kg2.44.87.29.612.014.4
50 kg3.06.09.012.015.018.0
60 kg3.67.210.814.418.021.6
70 kg4.28.412.616.821.025.2
80 kg4.89.614.419.224.028.8

3A組成の場合

NAD 3mg / 3mL + 生食 47mL(合計 50mL)の場合、0.05 γ = 体重 x 0.05 mL/hです。

キリが良いため、多くの病院で活用されています。

16.7倍希釈です。

なお、γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 3mg) x mg/h = 体重 x 1 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg1.53.04.56.07.59.0
40 kg2.04.06.08.010.012.0
50 kg2.55.07.510.012.515.0
60 kg3.06.09.012.015.018.0
70 kg3.57.010.514.017.521.0
80 kg4.08.012.016.020.024.0

5A組成の場合

NAD 5mg / 5mL + 生食 45mL(合計 50mL)の場合、0.05 γ = 体重 x 0.03 mL/hです。

10倍希釈です。

なお、γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 5mg) x mg/h = 体重 x 0.6 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg0.91.82.73.64.55.4
40 kg1.22.43.64.86.07.2
50 kg1.53.04.56.07.59.0
60 kg1.83.65.47.29.010.8
70 kg2.14.26.38.410.512.6
80 kg2.44.87.29.612.014.4

6A組成の場合

NAD 6mg / 6mL + 生食 44mL(合計 50mL)の場合、0.05 γ = 体重 x 0.025 mL/hです。

3A組成で用いている病院では、0.3γに近づいてくると数時間でなくなってしまうため、6A組成のように、倍の濃度にすることが多いです。

8.3倍希釈です。

なお、γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 6mg) x mg/h = 体重 x 0.5 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg0.751.52.253.03.754.5
40 kg1.02.03.04.05.06.0
50 kg1.252.53.755.06.257.5
60 kg1.53.04.56.07.59.0
70 kg1.753.55.257.08.7510.5
80 kg2.04.06.08.010.012.0

10A組成の場合

NAD 10mg / 10mL + 生食 90mL(合計 100mL)の場合、0.05 γ = 体重 x 0.03 mL/hです。

10倍希釈です。

なお、γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (100mL / 10mg) x mg/h = 体重 x 0.6 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg0.91.82.73.64.55.4
40 kg1.22.43.64.86.07.2
50 kg1.53.04.56.07.59.0
60 kg1.83.65.47.29.010.8
70 kg2.14.26.38.410.512.6
80 kg2.44.87.29.612.014.4

また、下記のような5倍希釈で用いることもあります。

NAD 10mg / 10mL + 生食 40mL(合計 50mL)の場合、0.05 γ = 体重 x 0.015 mL/hです。

5A組成で用いている病院では、0.3γに近づいてくると数時間でなくなってしまうため、このような10A組成にすることがあります。

なお、γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 10mg) x mg/h = 体重 x 0.3 mL/h の両辺を20で割って導出されます。

体重0.05 γ0.10 γ0.15 γ0.20 γ0.25 γ0.30 γ
30 kg0.450.91.351.82.252.7
40 kg0.61.21.82.43.03.6
50 kg0.751.52.253.03.754.5
60 kg0.91.82.73.64.55.4
70 kg1.052.13.154.25.256.3
80 kg1.22.43.64.86.07.2

ノルアドレナリンの投与経路

SSCG2021(Surviving Sepsis Campaign Guideline 2021)では、中心静脈路の確保を待つことなく、末梢静脈からでも開始するよう推奨しています。

ただし注意点として、短時間に留めること及び、前肘窩や、より近位の静脈内に投与することが記載されています。

  • For adults with septic shock, we suggest starting vasopressors peripherally to restore MAP rather than delaying initiation until a central venous access is secured
  • When using vasopressors peripherally, they should be administered only for a short period of time and in a vein in or proximal to the antecubital fossa
Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, Antonelli M, Coopersmith CM, French C, et al. Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med. 2021;47: 1181–1247.

ノルアドレナリンの副作用

添付文書には重大な副作用として徐脈が記載されています。

一般論としては、血管内脱水の状態で用いると、腸管虚血が懸念されます。

その他の副作用として、添付文書から引用します。

その他の副作用頻度不明
循環器心悸亢進、胸内苦悶、血圧異常上昇、呼吸困難
精神神経系頭痛、めまい、不安、振戦
消化器悪心・嘔吐
過量投与心拍出量減少、著明な血圧上昇、脳出血、頭痛、肺水腫
その他羞明、悪寒、鳥肌
ノルアドリナリン注1mg 添付文書より

まとめ

3A組成で使うとキリが良いです。

まとめ
  1. NAD 0.05〜0.3 γで使います。
  2. NAD 3A(3mg / 3mL)+生食47mL 組成で、0.05 γ = 体重 x 0.05 mL/h です。

参考資料

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