アムビゾームの特徴と投与方法

アムビゾーム(一般名:リポソーマル アムホテリシンB 英語:Liposomal Amphotericin B 略称:L-AMB)の特徴と投与方法をまとめます。

まとめ
  1. L-AMBは、大半の真菌(カンジダ・アスペルギルス・ムーコル・クリプトコックス)に殺菌的に作用するが、C. lusitaniaeA. terreus、フサリウム、トリコスポロン、スケドスポリウムに効果が乏しい。
  2. 投与例:下記①②③合わせて1日1回1〜2時間でdiv
    L-AMB 2.5〜5mg/kg(用量はFN 2.5mg/kg、最大5mg/kg、クリプトコックス髄膜炎6mg/kg)
    注射用水(L-AMB 50mgあたり)12mL
    5%ブドウ糖250mL(L-AMB 2.5mg/kg未満なら100mL可)
  3. 主な副作用は、腎障害、低K血症、低Mg血症、点滴中の発熱・寒気・嘔気
    ただし腎障害で減量規定はない。幹細胞輸注日には投与しない
  4. L-AMBは腎障害を軽減するDDS(Drug Delivery System)の性質を有するが、そのために尿路への移行性が悪く真菌性尿路感染症には適さない。真菌性髄膜炎に治療実績がある。

L-AMBの位置付け

L-AMBはポリエン系

抗真菌薬は大きく4種類に分けられます。

アゾールFLCZ, ITCZ, VRCZ, PSCZ, ISCZ
MCZ(外用剤)
ポリエンL-AMB
AMB(現在では内用液として使用)
フルシトシン5-FC
キャンディンMCFG, CPFG
ANFG, RZFG(日本未承認)

L-AMBはポリエン系(ポリエンマクロライド系)に分類され、最も長く使われている抗真菌薬です。重症の真菌感染症に対して最も信頼されている薬の一つです。

アゾール系が真菌細胞壁のエルゴステロールの合成酵素を阻害するのに対して、ポリエン系はエルゴステロールに結合することで効果を発揮します。

1960年代にAMB(AMPH-B、商品名:ファンギゾン)が登場し、カンジダ・アスペルギルス・ムーコル・クリプトコックス等を幅広くカバーし、かつ殺菌的に作用して重宝されましたが、腎障害や低K血症等の強い副作用が難点でした。現在ではハリゾンシロップやファンギゾンシロップとして効能効果「消化管におけるカンジダ異常増殖」で用いられることがあり、これらは消化管からほとんど吸収されないことを活用しています。

AMBの副作用を軽減したのがL-AMBです。脂質二分子膜でAMBを包むことで、生体細胞への副作用を軽減し、腎臓への分布を減らすというDrug Delivery System(DDS)製剤として、L-AMBが開発されました。近年、DNR+AraCをリポソームに封入したCPX-351(商品名:ビキセオス)が開発されましたが、コンセプトは似ていますね。

L-AMBがカバーしていない真菌

L-AMBはカバー範囲がとても広いため、抗菌薬でいえばカルバペネム系のようなイメージです。カルバペネム系がカバーしていない細菌を抑えることが重要であることと同じく、L-AMBがカバーしていない真菌を抑えることが重要です。

L-AMB効果ありL-AMB効果なし
酵母カンジダ
クリプトコックス
C. lusitaniae
トリコスポロン
糸状菌アスペルギルス
ムーコル
A. terreus
フサリウム
スケドスポリウム
二相性真菌Blastomyces
Coccidioides
Histoplasma
Sporothrix
寄生虫リーシュマニア

カンジダについて、L-AMBは C. lusitaniae をカバーしていません。

L-AMBは、C. aurisに対して、C. albicansよりも4倍効きづらいとのことですので、治療対象とする時にはL-AMB高用量を用います。Beredaki M-I, Sanidopoulos I, Pournaras S, Meletiadis J. Defining Optimal Doses of Liposomal Amphotericin B Against Candida auris: Data From an In Vitro Pharmacokinetic/Pharmacodynamic Model. J Infect Dis. 2024;229: 599–607.

出現頻度[%]FLCZITCZVRCZPSCZISCZMCFGCPFGL-AMB
C. albicans40-60        
C. parapsilosis5-30        
C. tropicalis5-30        
C. krusei2-4        
C. glabrata5-30        
C. lusitaniae0.5-1        
C. kefyr0.5-1        
C. guilliermondii0.5-1        
C. auris<0.01         

アスペルギルスについて、L-AMBは A. terreus をカバーしていません。

L-AMBは、A. flavusに対して少し苦手です。

FLCZITCZVRCZPSCZISCZMCFGCPFGL-AMB
A. fumigatus        
A. flavus        
A. niger        
A. terreus        

希少深在性真菌症について、L-AMBはフサリウム、トリコスポロン、スケドスポリウムが苦手です。

希少深在性真菌症のうち、L-AMBが有効なのはムーコルとクリプトコックスですが、ムーコルとクリプトコックスはβDグルカンが上昇しにくい深在性真菌症として知られています。また、希少深在性真菌症の多くにVRCZが有効ですが、VRCZ内服中のbreakthrough真菌症としてムーコルが重要で、そんなムーコルに対して点滴ならL-AMB、内服ならPSCZとISCZを用いることが重要です。

スケドスポリウムにL-AMBは無効です。スケドスポリウム症は、深部皮膚真菌症として生じることが多く、代表的な菌種は下記です。

  • 無性世代 Scedosporium apiospermum
  • 有性世代 Pseudallescheria boydii
FLCZITCZVRCZPSCZISCZMCFGCPFGL-AMB
ムーコル        
フサリウム        
トリコスポロン        
スケドスポリウム        
クリプトコックス        

移行性

L-AMBの移行性で注意すべき部位は尿路です。AMBの腎毒性を軽減するために、DDS(Drug Delivery System)としてリポソーマル化を施したわけですが、そのために尿路への移行性は低下しています。

L-AMBは真菌性尿路感染症に不適切です。

L-AMBの中枢神経系への移行性はそれほど良いわけではないですが、真菌性髄膜炎に実績があることから、下記のまとめでは良好のほうに分類しました。

中枢神経系感染への効果
良好:FLCZ、VRCZ、ISCZ、L-AMB
不良:ITCZ、PSCZ、MCFG、CPFG

白血球輸注時の注意点

L-AMBの禁忌に「白血球を輸注中の患者」と記載されているように、

L-AMBを白血球の輸注日には投与してはいけません

添付文書の相互作用の併用禁忌欄にも記載されています。

これはAMBが白血球輸注に関連した肺障害を増強する可能性が指摘されているためです。Wright DG, Robichaud KJ, Pizzo PA, Deisseroth AB. Lethal pulmonary reactions associated with the combined use of amphotericin B and leukocyte transfusions. N Engl J Med. 1981;304: 1185–1189.

L-AMBの投与方法

点滴

「アムビゾーム点滴静注用 50mg」の薬価が約11000円です。1日1回の点滴とはいえ、高価な薬剤です。

投与例:下記①②③合わせて1日1回1〜2時間でdiv
L-AMB 2.5〜5mg/kg(用量はFN 2.5mg/kg、最大5mg/kg、クリプトコックス髄膜炎6mg/kg)
注射用水(L-AMB 50mgあたり)12mL
5%ブドウ糖250mL(L-AMB 2.5mg/kg未満なら100mL可)

添付文書や製薬会社ウェブサイトに、注射液の調製法が記載されています。

腎障害・肝障害

腎障害での調節は規定されていません。ただし、L-AMBの副作用で腎障害が生じうるので注意します。特に腎毒性のある薬剤と併用している時は、さらに十分な注意が必要です。

肝障害での調節も規定されていません。

L-AMBの副作用・相互作用

副作用

L-AMBの副作用は、リポソーム化によりAMBよりも軽減されています。腎障害15%、点滴中の発熱11%、寒気37%、嘔気12%と報告されています。その他、低K血症、低Mg血症などの電解質異常、肝障害、皮疹にも注意します。Chau MM, Daveson K, Alffenaar J-WC, Gwee A, Ho SA, Marriott DJE, et al. Consensus guidelines for optimising antifungal drug delivery and monitoring to avoid toxicity and improve outcomes in patients with haematological malignancy and haemopoietic stem cell transplant recipients, 2021. Intern Med J. 2021;51 Suppl 7: 37–66.

相互作用

L-AMBはジゴキシン濃度を上昇させます。
L-AMBと腎毒性のある薬剤との併用はできるだけ避け、併用時は特に腎障害に注意します。

L-AMBを用いるような状況では、アミノグリコシド、シクロスポリン、ホスカルネット等の腎毒性のある薬剤を併用していることも多いと考えられ、十分な注意を要します。

L-AMBのエビデンス

持続する発熱性好中球減少症に対する L-AMB vs AMB(NEJM 1999)

持続する発熱性好中球減少症に対して、L-AMBがAMBと同等の効果があることを示した臨床試験です。輸注関連反応や腎障害は少なく、以後L-AMBが優先的に使用されていくこととなりました。

L-AMBAMB
症例数343344
総合臨床効果50.1%49.4%
好中球減少中の
解熱
58.0%58.1%
breakthrough
真菌感染症なし
90.1%89.2%
base-line真菌
感染症の治癒
81.8%72.7%
治験薬終了後
7日間の生存
92.7%89.5%
副作用や無効で
早期中止なし
85.7%81.4%
輸注後の発熱16.9%43.6%
腎障害
Cre1.5倍超
29.4%49.4%
低K血症6.7%11.6%
低Mg血症20.1%25.9%
Walsh TJ, Finberg RW, Arndt C, Hiemenz J, Schwartz C, Bodensteiner D, et al. Liposomal amphotericin B for empirical therapy in patients with persistent fever and neutropenia. National Institute of Allergy and Infectious Diseases Mycoses Study Group. N Engl J Med. 1999;340: 764–771.

まとめ

まとめ
  1. L-AMBは、大半の真菌(カンジダ・アスペルギルス・ムーコル・クリプトコックス)に殺菌的に作用するが、C. lusitaniaeA. terreus、フサリウム、トリコスポロン、スケドスポリウムに効果が乏しい。
  2. 投与例:下記①②③合わせて1日1回1〜2時間でdiv
    L-AMB 2.5〜5mg/kg(用量はFN 2.5mg/kg、最大5mg/kg、クリプトコックス髄膜炎6mg/kg)
    注射用水(L-AMB 50mgあたり)12mL
    5%ブドウ糖250mL(L-AMB 2.5mg/kg未満なら100mL可)
  3. 主な副作用は、腎障害、低K血症、低Mg血症、点滴中の発熱・寒気・嘔気
    ただし腎障害で減量規定はない。幹細胞輸注日には投与しない
  4. L-AMBは腎障害を軽減するDDS(Drug Delivery System)の性質を有するが、そのために尿路への移行性が悪く真菌性尿路感染症には適さない。真菌性髄膜炎に治療実績がある。

参考資料

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