ドブタミン(英語:Dobutamine 略称:DOB 先発品商品名:ドブポン、ドブックス、ドブトレックス)の投与方法についてまとめます。
- ドブタミンには3種類の濃度の製剤がある(0.1%、0.3%、0.6%)
- ドブタミンは1〜20γで使う
- ドブタミン0.3%製剤(150mg / 50mL)で、5γ = 体重 x 0.1mL/h
- ドブタミンは、心原性ショックにおいて、ミルリノンと同等(NEJM 2021)
ドブタミンの形は…?
ドブタミンには、3種類の濃度のキット製剤があります。
- ドブタミン0.1% = 50mg / 50mL 100mg / 100mL 200mg / 200mL
- ドブタミン0.3% = 150mg / 50mL 600mg / 200mL
- ドブタミン0.6% = 300mg / 50mL
投与方法について、添付文書の記載を確認します。
通常、ドブタミンとして、1分間あたり1〜5μg/kgを持続静注する。投与量は患者の病態に応じて、適宜増減し、必要ある場合には1分間あたり20μg/kgまで増量できる。
ドブタミン持続静注50mgシリンジ「KKC」添付文書
γ=μg/kg/minで記載されており、そのまま活用できます。
ドブタミンは1〜20 γ で使います。
ドパミンは何γ使うかによって作用が異なりますが、ドブタミンは一貫して心収縮力の増強を目的とします。
ドブタミンやドパミンの製剤バッグや添付文書にはγ換算表が付いていて便利です。
ドブタミンの代表的な投与方法
ドブタミン0.1%製剤(50mg / 50mL)の場合
γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 50mg) x mg/h = 体重 x 0.06 mL/h の両辺を5倍して、
5 γ = 体重 x 0.3 mL/h です。
▼ドブタミン0.1%製剤(50mg / 50mL)【体重・γ毎の早見表】単位:mL/h
体重 | 1 γ | 3 γ | 5 γ | 10 γ | 15 γ | 20 γ |
---|---|---|---|---|---|---|
30 kg | 1.8 | 5.4 | 9 | 18 | 27 | 36 |
40 kg | 2.4 | 7.2 | 12 | 24 | 36 | 48 |
50 kg | 3 | 9 | 15 | 30 | 45 | 60 |
60 kg | 3.6 | 10.8 | 18 | 36 | 54 | 72 |
70 kg | 4.2 | 12.6 | 21 | 42 | 63 | 84 |
80 kg | 4.8 | 14.4 | 24 | 48 | 72 | 96 |
ドブタミン0.3%製剤(150mg / 50mL)の場合
γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 150mg) x mg/h = 体重 x 0.02 mL/h の両辺を5倍して、
5 γ = 体重 x 0.1 mL/h です。
0.3%製剤はキリが良いので、この製剤を採用している病院が多いです。
▼ドブタミン0.3%製剤(150mg / 50mL)【体重・γ毎の早見表】単位:mL/h
体重 | 1 γ | 3 γ | 5 γ | 10 γ | 15 γ | 20 γ |
---|---|---|---|---|---|---|
30 kg | 0.6 | 1.8 | 3 | 6 | 9 | 12 |
40 kg | 0.8 | 2.4 | 4 | 8 | 12 | 16 |
50 kg | 1 | 3 | 5 | 10 | 15 | 20 |
60 kg | 1.2 | 3.6 | 6 | 12 | 18 | 24 |
70 kg | 1.4 | 4.2 | 7 | 14 | 21 | 28 |
80 kg | 1.6 | 4.8 | 8 | 16 | 24 | 32 |
ドブタミン0.6%製剤(300mg / 50mL)の場合
γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 300mg) x mg/h = 体重 x 0.01 mL/h の両辺を5倍して、
5 γ = 体重 x 0.05 mL/h です。
▼ドブタミン0.6%製剤(300mg / 50mL)【体重・γ毎の早見表】単位:mL/h
体重 | 1 γ | 3 γ | 5 γ | 10 γ | 15 γ | 20 γ |
---|---|---|---|---|---|---|
30 kg | 0.3 | 0.9 | 1.5 | 3 | 4.5 | 6 |
40 kg | 0.4 | 1.2 | 2 | 4 | 6 | 8 |
50 kg | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 5 | 7.5 | 10 |
60 kg | 0.6 | 1.8 | 3 | 6 | 9 | 12 |
70 kg | 0.7 | 2.1 | 3.5 | 7 | 10.5 | 14 |
80 kg | 0.8 | 2.4 | 4 | 8 | 12 | 16 |
ドブタミンの副作用
β1刺激で強心作用を発揮しますが、心臓に負荷をかけるので、心筋虚血に注意します。
また、β2刺激もあり血管拡張→血圧低下に注意します。通常はα1刺激で相殺されます。
その他の副作用として、添付文書より引用します。
その他の副作用 | 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
---|---|---|---|
循環器 | 不整脈(頻脈・期外収縮)等 | 過度の血圧上昇、動悸、胸部不快感、狭心痛、前胸部熱感、息切れ | 血圧低下 |
消化器 | 悪心、腹部痛等 | ||
注射部位 | 注射部位の発赤、腫脹等 | ||
その他 | 頭痛、発疹、好酸球増多 | 血清カリウムの低下 |
ドブタミンのエビデンス
心原性ショックで、PDEⅢ阻害薬ミルリノン vs ドブタミンは有意差なし
カナダのオタワ大学からの報告です。
ミルリノンとドブタミンは、機序は違いますが、どちらも血管拡張作用をもつ強心薬です。ミルリノンはホスホジエステラーゼⅢを阻害し、ドブタミンはβ1とβ2を刺激します。
心原性ショックでICUに入室した192例に対して、ミルリノン群とドブタミン群に1:1に無作為に割り付けて比較しましたが、主要複合転帰および重要な副次的転帰に有意差はありませんでした。主要複合転帰は院内死亡、蘇生された心停止、機械的循環補助、腎代替療法の開始等を含みます。Mathew R, Di Santo P, Jung RG, Marbach JA, Hutson J, Simard T, et al. Milrinone as Compared with Dobutamine in the Treatment of Cardiogenic Shock. N Engl J Med. 2021;385: 516–525.
ミルリノン群 | ドブタミン群 | |
---|---|---|
症例数 | N=96 | N=96 |
主要複合転帰 | 49% | 54% |
院内死亡 | 37% | 43% |
蘇生された心停止 | 7% | 9% |
機械的循環補助 | 12% | 15% |
腎代替療法 | 22% | 17% |
まとめ
0.3%製剤がキリが良いです。
- ドブタミンには3種類の濃度の製剤がある(0.1%、0.3%、0.6%)
- ドブタミンは1〜20γで使う
- ドブタミン0.3%製剤(150mg / 50mL)で、5γ = 体重 x 0.1mL/h
- ドブタミンは、心原性ショックにおいて、ミルリノンと同等(NEJM 2021)