ドパミンの投与方法と用量計算

ドパミン(英語:Dopamine 略称:DOA 先発品:イノバン、カタボン)の投与方法と用量計算についてまとめます。

まとめ
  1. ドパミンには3種類の濃度のキット製剤がある(0.1%、0.3%、0.6%)
  2. ドパミンの作用は、1〜3γ:腎血流↑ 3〜10γ:β刺激 10〜20γ:α刺激
  3. ドパミン0.3%製剤で、5γ = 体重 x 0.1mL/h
  4. ドパミンは、ショックに対して、効果はノルアドレナリンと同等だが、不整脈が増加(NEJM 2010)

ドパミンの形は…?

ドパミンには3種類の濃度のキット製剤があります。

  • ドパミン0.1% = 50mg / 50mL  200mg / 200mL
  • ドパミン0.3% = 150mg / 50mL  600mg / 200mL
  • ドパミン0.6% = 300mg / 50mL

また、ドパミンのアンプル製剤もあります。1A = 50mg / 2.5mL、100mg / 5mL、200mg / 10mL です。

ドパミンの添付文書を確認します。

通常ドパミン塩酸塩として1分間あたり1〜5μg/kgを持続静脈投与し、患者の病態に応じ20μg/kgまで増量することができる。投与量は患者の血圧、脈拍数および尿量により適宜増減する。

イノバン0.3%シリンジ 添付文書

ドパミンは何γ用いるかによって、作用が変わります。

投与量優位になる受容体作用
1〜3γD(ドパミン)腎・腸の血流増加
3〜10γβ強心作用
10〜20γα血管収縮、催不整脈

ドパミンの作用は、1〜3γ:腎血流↑ 3〜10γ:β刺激 10〜20γ:α刺激

腎血流増加を目的とした、低用量ドパミンは、現在推奨されていません。

ドパミンのキット製剤のバッグには、γ換算表が付いていて便利です。

ドパミンの代表的な投与方法

ドパミン0.1%製剤(50mg / 50mL)の場合

γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 50mg) x mg/h = 体重 x 0.06 mL/h の両辺を5倍して、

5γ = 体重 x 0.3 mL/h です。

体重1 γ3 γ5 γ10 γ15 γ20 γ
30 kg1.85.49182736
40 kg2.47.212243648
50 kg3915304560
60 kg3.610.818365472
70 kg4.212.621426384
80 kg4.814.424487296

ドパミン0.3%製剤(150mg / 50mL)の場合

γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 150mg) x mg/h = 体重 x 0.02 mL/h の両辺を5倍して、

5γ = 体重 x 0.1 mL/h です。

体重1 γ3 γ5 γ10 γ15 γ20 γ
30 kg0.61.836912
40 kg0.82.4481216
50 kg135101520
60 kg1.23.66121824
70 kg1.44.27142128
80 kg1.64.88162432

ドパミン0.6%製剤(300mg / 50mL)の場合

γ = 体重 x 0.06 mg/h = 体重 x 0.06 x (50mL / 300mg) x mg/h = 体重 x 0.01 mL/h の両辺を5倍して、

5γ = 体重 x 0.05 mL/h です。

体重1 γ3 γ5 γ10 γ15 γ20 γ
30 kg0.30.91.534.56
40 kg0.41.22468
50 kg0.51.52.557.510
60 kg0.61.836912
70 kg0.72.13.5710.514
80 kg0.82.4481216

ドパミンの副作用

一般的には、頻脈をはじめとする不整脈が知られており、特に10γ以上使う時には要注意です。

添付文書には重大は副作用として麻痺性イレウス末梢虚血が挙げられています。

その他の副作用を添付文書から引用します。

その他の副作用5%以上0.1〜5%未満0.1%未満頻度不明
循環器不整脈(心室性期外収縮、心房細動、心室性頻拍等)動悸頻脈
消化器嘔気、嘔吐、腹部膨満、腹痛
その他静脈炎、注射部位の変性壊死、起毛
イノバン0.3%シリンジ 添付文書

ドパミンのエビデンス

ドパミンは、ショックに対して、効果はノルアドレナリンと同等だが、不整脈が増加(NEJM 2010)

ショック状態の患者に対する多施設共同無作為比較試験(SOAP Ⅱ 試験)の結果、ショックに対する第一選択はドパミンではなく、ノルアドレナリンに定着しました。

28日死亡率は同等でしたが、有害事象についてドパミン群で不整脈(特に心房細動)が増加しました。De Backer D, Biston P, Devriendt J, Madl C, Chochrad D, Aldecoa C, et al. Comparison of dopamine and norepinephrine in the treatment of shock. N Engl J Med. 2010;362: 779–789.

ドパミン群ノルアドレナリン群
症例数858例821例
28日後死亡率52.5%48.5%
不整脈24.1%12.4%

さらに、サブグループ解析で、循環血漿量減少性ショックと敗血症性ショックでは差がありませんでしたが、心原性ショックで差がつきました。

ドパミンは10γを超えると、催不整脈作用が増すと言われており、妥当な結果と考えられます。

この試験のプロトコール上の問題点として下記のような点が挙げられますが、それらを差し引いても当時ドパミンを使っていた臨床現場に大きな一石を投じ、ノルアドレナリンへのパラダイムシフトを起こした重要な研究です。Levy JH. Treating shock–old drugs, new ideas. The New England journal of medicine. 2010. pp. 841–843.

  • 初期輸液1Lは比較的少ない(特に敗血症性ショックと循環血漿量減少性ショック)
  • ドパミン20γとノルアドレナリン0.19γは同等ではない
  • ショックの定義が曖昧

なお、この研究の前に、SOAP研究という観察研究があり、ドパミンやアドレナリンの使用が、ショック患者のICUでの死亡の独立したリスクファクターだと指摘しています。Sakr Y, Reinhart K, Vincent J-L, Sprung CL, Moreno R, Ranieri VM, et al. Does dopamine administration in shock influence outcome? Results of the Sepsis Occurrence in Acutely Ill Patients (SOAP) Study. Crit Care Med. 2006;34: 589–597.

ドパミンは、敗血症性ショックに対して、ノルアドレナリンより死亡率が高く、不整脈も多い(Crit Care Med 2012)

SOAP Ⅱ 試験では、心原性ショック以外の、循環血漿量減少性ショックと敗血症性ショックで死亡率に差がつきませんでした。これには、前述の問題点の影響が考えられます。

その後、同じ著者 Daniel De Backer率いるチーム(ブリュッセル自由大学エラスム病院)が、敗血症性ショックにおけるドパミン vs ノルアドレナリンのメタアナリシスをまとめました。

その結果は、ドパミンが、ノルアドレナリンより死亡率が高く、不整脈も多いというものでした。De Backer D, Aldecoa C, Njimi H, Vincent J-L. Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: a meta-analysis. Crit Care Med. 2012;40: 725–730.

まとめ

0.3%製剤がキリが良いです。

まとめ
  1. ドパミンには3種類の濃度のキット製剤がある(0.1%、0.3%、0.6%)
  2. ドパミンの作用は、1〜3γ:腎血流↑ 3〜10γ:β刺激 10〜20γ:α刺激
  3. ドパミン0.3%製剤で、5γ = 体重 x 0.1mL/h
  4. ドパミンは、ショックに対して、効果はノルアドレナリンと同等だが、不整脈が増加(NEJM 2010)

参考資料

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です