フルコナゾールの特徴と投与方法

フルコナゾール(英語:Fluconazole 略称:FLCZ 商品名:ジフルカン)の特徴と投与方法をまとめます。

ホスフルコナゾール(英語:Fosfluconazole 略称:F-FLCZ 商品名:プロジフ)の特徴と投与方法もまとめます。

まとめ
  1. FLCZは、C. albicans、C. parapsilosis、C. tropicalisをカバーし、C. krusei、C. glabrataをカバーしていない。
  2. FLCZは、クリプトコックスをカバーし、アスペルギルス、ムーコル、フサリウム、トリコスポロン、スケドスポリウムをカバーしていない。
  3. 予防:FLCZ(100mg)1〜2T/1x 朝後
  4. 口腔カンジダ:FLCZ(100mg)1T/1x 朝後 7〜14日間
  5. 食道カンジダ:FLCZ(100mg)2T/1x 朝後 14〜21日間
  6. 症候性カンジダ性膀胱炎:FLCZ(100mg)2T/1x 朝後 14日間
  7. 上行性カンジダ性腎盂腎炎:FLCZ(100mg)2〜4T/1x 朝後 14日間
  8. カンジダ膣炎:軽症ならFLCZ150mg単回内服 重症ならFLCZ150mg内服を3日ごとに2〜3回
  9. FLCZ 点滴:800mg/400mL 1日1回2時間でdiv x2日間 → 400mg/200mL 1日1回1時間でdiv
  10. F-FLCZ 静注:800mg/10mL 1日1回1分でiv x2日間 → 400mg/5mL 1日1回30秒でiv(F-FLCZはFLCZのプロドラッグで、FLCZの40分の1の液量)
  11. 腎障害(CCr<50)で半減する。
  12. 肝障害、消化器症状、皮疹に注意する。相互作用は必ずチェック!

FLCZの位置付け

スペクトラムが最も狭い抗真菌薬の一つです。

予防投与として、あるいは菌株と感受性が確定している時の治療投与として使います。

エキノキャンディン系は髄液や眼内への移行性が悪いですが、FLCZは良好です。

FLCZは、軽症のカンジダ、クリプトコックス髄膜炎後の維持療法や2次予防に使います。

カンジダの代表的な5菌株のうち、C. albicans、C. parapsilosis、C. tropicalisをカバーしています。

C. albicansは最も代表的なカンジダで、主に消化管に常在します。FLCZ耐性C. albicansの報告もあります。

C. parapsilosisは主に皮膚に常在します。バイオフィルム形成能が高く、CRBSIをよく起こします。エキノキャンディン系のMICが高めですが臨床的意義は不明です。

C. tropicalisC. albicans同様に毒性が強く、特に好中球減少下では予後不良です。

カバーしていないカンジダで代表的なものは、C. krusei、C. glabrataです。

C. kruseiはITCZでも厳しいですが、VRCZとPSCZならカバーできます。

C. glabrataはアゾール系全般で厳しく、増えてきており要注意です。FLCZに用量依存的に耐性で、高用量であれば効果が見込めることもあります。エキノキャンディン系やL-AMBが候補となりますが、FKS変異によるエキノキャンディン系耐性株に留意します。

カテーテル使用によってC. parapsilosisが増え、低用量のFLCZ使用によってC. glabrataが増えています。

その他のカンジダとして、C. lusitaniae、C. kefyrをカバーしています。

C. lusitaniaeはL-AMBへの自然耐性で知られています。

C. kefyrはカスピ海と黒海の間にあるコーカサス地方の乳飲料ケフィアから分離された真菌です。

C. guilliermondiiは耐性率5〜15%、近年注目のC. aurisは耐性率40〜50%(報告によっては90%)に達しています。

FLCZ
C. albicans 
C. parapsilosis 
C. tropicalis 
C. krusei 
C. glabrata 
C. lusitaniae 
C. kefyr 
C. guilliermondii 
C. auris 

アスペルギルス、ムーコル、フサリウム、トリコスポロン、スケドスポリウムはカバーしていません。

FLCZの投与方法

FLCZ 内服

剤型は4種類です。

  • カプセル 50mg
  • カプセル 100mg
  • ドライシロップ 350mg →1Vにつき24mLの水を加えて懸濁すると10mg/mL
  • ドライシロップ 1400mg →1Vにつき24mLの水を加えて懸濁すると40mg/mL

経口剤のバイオアベイラビリティは90%以上あります。

胃内pHや食事の影響は少ないです。

添付文書から投与方法を確認します。

成人

  • カンジダ症
    通常、成人にはフルコナゾールとして50〜100mgを1日1回経口投与する。
  • クリプトコッカス症
    通常、成人にはフルコナゾールとして50〜200mgを1日1回経口投与する。
  • なお、重症又は難治性真菌感染症の場合には、1日量として400mgまで増量できる。
  • 造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防
    成人には、フルコナゾールとして400mgを1日1回経口投与する。
  • カンジダ属に起因する腟炎及び外陰腟炎
    通常、成人にはフルコナゾールとして150mgを1回経口投与する。
フルコナゾール 添付文書

次に、日本医真菌学会の「侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン」を参照します。

口腔(咽頭)カンジダ症

  • FLCZのドライシロップを用いて懸濁液を調整し、1日1回5mL(50mg)を含銜法で使用することができる(FLCZはカンジダ症には50〜100mg経口投与または静注)。350mg製剤1瓶に24mLの水を加えて懸濁すると10mg/mLとなる(調整後は5〜30℃で保存し、2週間以内に使用する)

食道カンジダ症

  • 経口FLCZ100-200mg/日、2〜3週間は食道カンジダ症に対し、最も安全かつ有効な治療選択である。
  • 治療期間については FLCZ の有効性を示した多くのRCTで2週間以上の治療が行われているが、実際の臨床現場においては、症状の改善が確認できれば1週間程度で治療を終了して良いと考えられる。これまでの検討により、内視鏡的な完全治癒には2〜3週間程度の長期投与を要することが分かっているが、カンジダはヒト消化管の常在菌であるため、本症の治療目標は食道からのカンジダの除菌ではありえない。
日本医真菌学会編 侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン

サンフォードやプラチナマニュアル、IDSAガイドライン等の記載も概ね同様ですが、用量の幅はあります。Pappas PG, Kauffman CA, Andes DR, Clancy CJ, Marr KA, Ostrosky-Zeichner L, et al. Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2016;62: e1–50.

HIV感染症等の免疫不全時に口腔カンジダ症や食道カンジダ症が見られます。口腔カンジダ症はAIDS指標疾患ではありませんが、食道カンジダ症は指標疾患に該当します。

例として、
・口腔カンジダ症に FLCZ(100mg)1T/1x 朝後 7〜14日間
・食道カンジダ症に FLCZ(100mg)2T/1x 朝後 14〜21日間
・移植後等の予防投与で FLCZ(100mg)1〜2T/1x 朝後

また、症候性膀胱炎、上行性腎盂腎炎、膣炎の治療にも用いられます。膣炎への単回投与は保険適用です。

例として、
・症候性カンジダ性膀胱炎:FLCZ(100mg)2T/1x 朝後 14日間
・上行性カンジダ性腎盂腎炎:FLCZ(100mg)2〜4T/1x 朝後 14日間
・カンジダ膣炎:軽症ならFLCZ150mg単回内服 重症ならFLCZ150mg内服を3日ごとに2〜3回

腎障害で減量しますが、どれくらい減量するかの詳細は成書をご参照願います。成書によって微妙に異なります。

原則として、腎障害(CCr<50mL/min)で半減します。

肝障害での減量はありません。

相互作用(併用禁忌・併用注意)と副作用の確認も必須です。例えば、ハルシオンやロナセンが併用禁忌です。

FLCZ 点滴

剤型は3種類です。

  • 静注液 50mg / 50mL
  • 静注液 100mg / 50mL
  • 静注液 200mg / 100mL

添付文書の記載は、内服の場合とほとんど同じですが、速度の指定があります。

静注する場合は、1分間に10mLを超えない速度で投与することが望ましい。

フルコナゾール静注液 添付文書

Loading投与を行う場合は、800mg/日を2日間です。400mLを1時間でも一応投与はできますが、心機能に心配がある時は2時間くらいかけます。Loading投与を行うことで3日間で定常状態に持ち込めます。Loading投与を行わないと定常状態に達するまで6〜10日間かかると報告されています。

用量について、loading doseは12mg/kg、maintenance doseは6mg/kgの目安がありますので、体重が小さい時には調整を考慮します。

例として、
1〜2日目 FLCZ 800mg / 400mL 1日1回2時間でdiv
3日目〜 FLCZ 400mg / 200mL 1日1回1時間でdiv

F-FLCZ 静注

FLCZ静注液の輸液量を40分の1に減らしたのが、FLCZのプロドラッグである、F-FLCZ(一般名:ホスフルコナゾール 商品名:プロジフ)です。

ボーラス投与が可能となり、心不全等で輸液量を減らしたい時に役立ちます。

  • プロジフ静注液 100mg / 1.25mL
  • プロジフ静注液 200mg / 2.5mL
  • プロジフ静注液 400mg / 5mL

まず添付文書を確認します。

カンジダ症

  • 通常、成人にはホスフルコナゾール63.1〜126.1mg(フルコナゾールとして50〜100mg)を維持用量として1日1回静脈内に投与する。ただし、初日、2日目は維持用量の倍量として、ホスフルコナゾール126.1〜252.3mg(フルコナゾールとして100〜200mg)を投与する。
  • なお、重症又は難治性真菌感染症の場合には、ホスフルコナゾール504.5mg(フルコナゾールとして400mg)まで維持用量を増量できる。ただし、初日、2日目は維持用量の倍量として、ホスフルコナゾール1009mg(フルコナゾールとして800mg)まで投与できる。

クリプトコッカス症

  • 通常、成人にはホスフルコナゾール63.1〜252.3mg(フルコナゾールとして50〜200mg)を維持用量として1日1回静脈内に投与する。ただし、初日、2日目は維持用量の倍量として、ホスフルコナゾール126.1〜504.5mg(フルコナゾールとして100〜400mg)を投与する。
  • なお、重症又は難治性真菌感染症の場合には、ホスフルコナゾール504.5mg(フルコナゾールとして400mg)まで維持用量を増量できる。ただし、初日、2日目は維持用量の倍量として、ホスフルコナゾール1009mg(フルコナゾールとして800mg)まで投与できる。

薬剤投与時の注意

  • 本剤は10mL/分を超えない速度で投与することが望ましい。
プロジフ静注液 添付文書

腎障害で半減すること、肝障害での減量なし、相互作用と副作用が多いことはFLCZ同様です。

例として、
1〜2日目 F-FLCZ 800mg / 10mL 1日1回1分でiv
3日目〜 F-FLCZ 400mg / 5mL 1日1回30秒でiv

FLCZの副作用・相互作用

FLCZの副作用

肝障害、消化器症状、皮疹に注意します。

肝障害は報告により差があり1〜18%とされていますが、肝障害による中断はまれ(0〜5%)です。消化器症状(嘔気・嘔吐・下痢)は0〜9%です。皮疹が4〜6%で生じるため注意します。腎障害は1〜3%ですが、腎障害での減量基準(CCr<50mL/minで半減)がある点に注意します。その他、QT延長の報告があります。Chau MM, Daveson K, Alffenaar J-WC, Gwee A, Ho SA, Marriott DJE, et al. Consensus guidelines for optimising antifungal drug delivery and monitoring to avoid toxicity and improve outcomes in patients with haematological malignancy and haemopoietic stem cell transplant recipients, 2021. Intern Med J. 2021;51 Suppl 7: 37–66.

FLCZは薬剤性肝障害を起こす重要な薬剤17種類のリストに入りました。1万人・年あたり5.0~9.9件以上の肝障害が発生したと評価されました。Torgersen J, Mezochow AK, Newcomb CW, Carbonari DM, Hennessy S, Rentsch CT, et al. Severe Acute Liver Injury After Hepatotoxic Medication Initiation in Real-World Data. JAMA Intern Med. 2024. doi:10.1001/jamainternmed.2024.1836

FLCZの相互作用

FLCZはCYP3A4を中等度に阻害します。阻害の強さは、ITCZ・VRCZ・PSCZより弱く、ISCZと同等です。タクロリムス、シクロスポリン、イブルチニブ、レンボレキサント、アトルバスタチン、リバーロキサバン等との相互作用に注意します。リファンピシンと併用するとFLCZ濃度が低下すると考えられます。

またCYP2C9とCYP2C19を阻害します。ワルファリン、フェニトイン等との相互作用に注意します。

FLCZはQT延長の報告がありますので、添付文書にも記載があるように、亜ヒ酸との併用は避けたいところです。

FLCZのエビデンス

FLCZのカンジダへの感受性の大規模研究(ALTEMISサーベイランス)

2001〜2007年に収集されたカンジダ19万株に対する、FLCZとVRCZの感受性のデータがまとめられています。

分離株数FLCZVRCZ
C. albicans12万98.0%98.5%
C. glabrata2.3万68.7%82.9%
C. tropicalis1.5万91.0%89.5%
C. parapsilosis1.2万93.2%97.0%
C. krusei0.5万8.6%83.2%
C. guilliermondii0.1万73.5%90.5%
C. lusitaniae0.1万92.1%96.7%
C. kefyr0.1万96.5%98.7%
Pfaller MA, Diekema DJ, Gibbs DL, Newell VA, Ellis D, Tullio V, et al. Results from the ARTEMIS DISK Global Antifungal Surveillance Study, 1997 to 2007: a 10.5-year analysis of susceptibilities of Candida Species to fluconazole and voriconazole as determined by CLSI standardized disk diffusion. J Clin Microbiol. 2010;48: 1366–1377.より主要なカンジダについて引用

エキノキャンディン系→FLCZ or VRCZへのstep down療法

侵襲性カンジダ症に対して、anidulafungin 200mg 初日→100mg 2日目〜点滴で治療開始し、5〜7日間投与して、下記条件に合致すれば、アゾール系(FLCZ or VRCZ)内服に切り替えるという単アーム試験で、83.7%の治療成功率であったと報告されています。Vazquez J, Reboli AC, Pappas PG, Patterson TF, Reinhardt J, Chin-Hong P, et al. Evaluation of an early step-down strategy from intravenous anidulafungin to oral azole therapy for the treatment of candidemia and other forms of invasive candidiasis: results from an open-label trial. BMC Infect Dis. 2014;14: 97.

  • 経口投与可
  • 24時間以上解熱
  • 血行動態が安定
  • 好中球減少なし
  • 血培陰性化

この試験でのアゾール系の使い分けは、C. albicansC. parapsilosisではFLCZ 400mg x1回/日、それ以外ではVRCZ 200mg x2回/日でした。

まとめ

まとめ
  1. FLCZは、C. albicans、C. parapsilosis、C. tropicalisをカバーし、C. krusei、C. glabrataをカバーしていない。
  2. FLCZは、クリプトコックスをカバーし、アスペルギルス、ムーコル、フサリウム、トリコスポロン、スケドスポリウムをカバーしていない。
  3. 予防:FLCZ(100mg)1〜2T/1x 朝後
  4. 口腔カンジダ:FLCZ(100mg)1T/1x 朝後 7〜14日間
  5. 食道カンジダ:FLCZ(100mg)2T/1x 朝後 14〜21日間
  6. 症候性カンジダ性膀胱炎:FLCZ(100mg)2T/1x 朝後 14日間
  7. 上行性カンジダ性腎盂腎炎:FLCZ(100mg)2〜4T/1x 朝後 14日間
  8. カンジダ膣炎:軽症ならFLCZ150mg単回内服 重症ならFLCZ150mg内服を3日ごとに2〜3回
  9. FLCZ 点滴:800mg/400mL 1日1回2時間でdiv x2日間 → 400mg/200mL 1日1回1時間でdiv
  10. F-FLCZ 静注:800mg/10mL 1日1回1分でiv x2日間 → 400mg/5mL 1日1回30秒でiv(F-FLCZはFLCZのプロドラッグで、FLCZの40分の1の液量)
  11. 腎障害(CCr<50)で半減する。
  12. 肝障害、消化器症状、皮疹に注意する。相互作用は必ずチェック!

参考資料

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